updateしました。3/11
生きていると、時として、自分ではどうしようもできないことが起きる。病気や天災、大切な人の突然の死などの不幸や災いは、なぜそれが自分の身にふりかかるのか、その理由は、一生わからない場合もある。どんなに頑張っても、例え正しく人生を歩んでいたとしても、人間の力ではどうしようもないことがあるのだ。もし、事実や状況が変えられないのであれば、変えることができるのは、自分の視点・考え方・姿勢である。自分の弱みをさらけ出すことにもなるが、心を開いて自分のことを周りの友人に告げて、精神的なサポートを求めるか、自分のうちにこもってひとりで闘うかなども、全ては、選択である。物事を受け取り方、対応の仕方で、人生の見え方も変わってくる。この『FAUSTUS』は私というものを写真の中に反映させて使ってはいるが、私の物語ではない。
ネガティブな経験でも、自分ではどうにもできないその状況にsurrender(降参)し身をゆだね、そこから「美」、「愛」、「信じること」、「希望」など、そしてもっと大きな何かを見出したとき、ポジティブな気持ちも生まれ、心の安らぎや歓びを感じることさえも可能になる。Transformation… そんな中、私の場合は、自分の血で絵を描いてそれを撮影するという「楽観さ」への変換も加わった。写真集『FAUSTUS』はその気持ちの移り変わりも綴っているので、見ながら・読みながら・感じながら、一緒に心・感情の旅をして欲しい。
不安と恐怖などで精神的に押しつぶされそうな状況の中、小指からほとばしる血でキャンバスや紙に絵を描いたり、血滴の凝固を撮影したりしたのは、冷静に自分の感情と向き合ってのことだった。もうひとりの自分が客観視していたかのように。
体の一部を喪失(lost)したが、最終的に、起こった全てのことに対して感謝が芽生えるまでに至り、祝福でさえ感じることが可能であるのだ。この経験に関わったもの、経験そのものを「贈り物」として得た(gain)したのである。
過去に、10万人にひとりに起こるという原因不明の病気で子供を亡くしたり(そんなめずらしいものにばかり当たる運命かぁ・・・)、自分も死に至る可能性もあった状況や、さらに度重なる災いなどの経験が、実は、今回の私を支えた役割を果たした結果にもなり、人生は全てが今につながる神様からの「贈り物」(gift)だと思えるようになった。あの時のまさに満身創痍、精神と肉体両方の痛みや苦痛に比べると、ニューヨークで出会った友人たちの愛情あふれるサポートもあり精神的には安定していて、小指1本の喪失はなんともない。(特に麻酔がきれた時は痛かったけど :)。また、写真集にあるように、術後、女性としての自信を失って落ち込んだこともあるけれど、でも、I know I’m “STILL LOVED.” 写真作品のタイトルでもあり、この本の結論でもある。
読者の皆さんも、どんなことがあっても 「You are Still Loved!! なんだよ〜」というのもメッセージのひとつだ。
これらは、私の「考え方の選択」でもある。
この一連の過程と出来事を振り返ると、一見不幸に見えることも含めて全て、私にとって、「ファウストス」(祝福された・幸運)な人生と思えるのだ。
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