ゲイリー・エドワーズ(写真画廊ディレクター Gallery director)

(By Gary Edwards) >> English

「大庭みさこは、日本やニューヨークでテレビ局アナウンサーとしてのキャリアを去った後、私生活でのいくつかの苦難に続いて、その後ニューヨークに移る機会を得、写真作家・アーティストとして新たにスタートを切った。初期の作品シリーズ「El Camino」や「Fireflies」は、東京やパリ、ニューヨーク等の都市を、神秘的かつ抽象味を帯びた独特な解釈で表現し、それらが写真界で重要な関心を集め始めていた2006 年、彼女はまた新たな悲劇̶に直面する。右手小指がAVM(動静脈奇形)という稀な自然出血症状に見舞われた。日本に家族を残したまま、米国での度重なる医療処置と最終的な小指切除手術の決断に迫られる中、大庭の「FAUSTUS」シリーズは、一見私的なものに見えるが、勇気を持って恐怖と「喪失」に向き合い、人間として誰にでも起こりうるもっとも基本的な物語を探求した普遍的なドラマである。(略)彼女が並外れた能力と勇気を持った芸術家でなければ、このトラウマは単に本人や親しい友人・家族の内だけにとどまっていただろう。私は大庭のアート全てが、ある意味、一握りのアーティストだけが持っている、自分の感情や魂の状態を鋭く洞察する力を反映していると信じている。」
大庭みさこ写真集『FAUSTUS』あとがき –
イリー・エドワーズ より一部抜粋